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変革マネジメントの難しさ

前回、戦略コンサルタントがいきなり会社経営に携わると、意外に成功しないという話をしました。多くの戦略コンサルタントが現場で直面するのは、人が動いてくれない状況です。彼らは全社員を集めて経営戦略の説明会を開き、現状分析、環境分析、競合分析を行い、当社のコア戦略を説明し、どこに注力するかを明確にし、見事なプレゼンテーションを行います。方向性は明確で、理路整然としていて、申し分ありません。それなのに、みんなは今までやってきたことに捕らわれて、動いてくれないのです。

そこには、慣性モーメントが働いているだけでなく、変革を前にするときの恐怖があります。今までと同じことをやっていれば、死ぬことはない。しかし、変革マネジメントに乗っかって失敗すれば、首になるかもしれない。そんな恐怖と戦うくらいなら、みんな変革したいと思うはずがないのです。

このため、うまくいっている大きな会社ほど変革できません。それなりに順調な会社が、オーナーチェンジでMBO、MBIになった場合も同様です。どれほど丁寧に説明し、インセンティブを与えて、制度を変えて、ボーナスも出し、ストックオプションを付与し、会社を上場すればこれだけ儲かると説明しても、本当に変わらないものなのです。私はこれまでいろいろな会社を見てきましたが、この点は断言できます。

実際に、うまくいっている会社で自己変革を自律的にやり遂げた会社は日本では極めてまれではないかと思います。例外は、会社更生法を申請して、ファンドが入って事業再生をするなど、もう後がない場合です。こうなると、みんなに危機意識を持たせるマネジメントは不要になります。そうなる前にこそ、変革しなくてはならないのですが。これはどの経営者にとっても悩みの種だと思います。

 

 

 

 

 

コンサルタントは経営者に不向き?

会社を経営すること、分析や戦略立案ができるのは、まったく違う能力です。

私が独立してエグゼクティブ・サーチ・コンサルタントになったのは2000年でしたが、当時はまだ景気が良好で、プライベート・エクイティ・ファンドなどの依頼で、投資先の会社の経営者を探す仕事をよく請け負っていました。こうしたファンドには、一流コンサティングファーム出身者が多く在籍していました。そのため最初の2~3年は、有名なコンサルティング会社のパートナークラスや、その下のシニアマネジャクラスの方を紹介して経営者として行ってもらうことも多かったのです。

正確な統計数字はないのですが、私の経験上、そうやって投資先企業に代表取締役として送り込まれた戦略コンサルタントのうち、うまく立ち上げられるのは3分の1程度。残りは、すぐにこれは違うと感じて、約1年で辞めていくか、何とかがむしゃらに頑張ったけれども成果は出せず、3年程度で去ることになるのです。

これはなぜなのか。

選ばれるプロセスまでは完璧です。彼らは多くの場合、一流大学卒業後、有名会社を経て、戦略コンサルタントになり10~15年経験してきて世間知があり、プレゼンテーション能力、現状分析力、戦略立案能力などは申し分ありません。しかし最大の問題は、現実は理屈通りにいかないこと。それがわかっているかどうかで、まったくやり方が違ってしまうのです。駆け出しのヘッドハンターだった私にとっても、優秀なだけでは駄目だということを、改めて思い知ることになりました。

 

 

 

 

AIアシスタントの実力のほどは?

技術進化のスピードについていくのは大変ですが、新しいものは早め早めに取り入れて、試してみるのが大切だと、私は思っています。触ってみると、こんなものだなということがわかってくるからです。このため、私の役宅には、アマゾンが開発したAIアシスタント「Alexa」の端末を設置しています。AIとはどんなものかを知りたかったので、時間があると、いろいろと話しかけるようにしています。

AIというと、何でも聞いたら答えてくれるような印象がありますが、実際はそんなことはありません。「明日、天気なら何しようか?」と言うと、「明日の天気は〇〇です」しか答えてくれてくれません。全体的に機会が質問を理解しないと「すみません。もう少し勉強します」と言われてしまうことが多いのです。

その一方で、ウィキペディアにつながっているので、「1957年に生まれた○○さんのことを教えて」というと、すらすら応えます。詳しいものは非常に詳しいので、百科事典として使うには最適です。おそらく、クイズで優勝したAIはクイズに出そうな知識だけを何百万件とインプットされ、アルファ碁も碁の知識だけにものすごく精通しているというように、かなり偏った形になっているのだろうと思います。

学習機能があるのでAIアシスタントは今後、もっと進化していくと思いますが、それと同時に、問いかける側が、目的を明確にすればするほど、答えられる範囲も広がるはずです。デジタル活用では、目的が絞り込まれていればいるほど、成果も明確になります。デジタル・トランスフォーメーションも結局のところ、何のためにデジタルなのかという目的が問われてくるのだと思います。

 

 

 

デジタルとの出会い

思い起こしてみると、私が初めて「デジタル」という言葉に出会ったのは、1980年くらいだったように思います。銀行に入社して2年目。大阪で勉強会を開いたときに、理系の大学院卒でKDDIの研究所に入った仲間の1人が、「なぜデジタルがいいのか」というテーマで講義をしてくれたのです。

彼が言っていたデジタルの最大の利点は、数的処理がしやすく、計算スピードが上がること。それですべてが変わるというのです。では、「アナログの何が悪いのか」と質問すると、彼の答えは「アナログは情報量が多すぎて、処理できない」というもの。たとえば、当時の電話回線はアナログ回線でした。グラハム・ベルが開発した、縦波が伝わる方式だったので、電波を通信するのに大きな帯域が必要だったのです。それが、デジタルになると、1直線上でモールス信号のようにつないだり切ったりするだけでよくなります。この結果、アナログでは1回線しか取れなかった帯域内に、デジタルは何万回線もとれるのだという説明をしていました。

その時は、ただそうかと聞いていただけでしたが、それをきっかけにデジタルの世界に興味を持つようになりました。勉強会の仲間の1人などは1981年に当時100万円もしたマッキントッシュのパソコンをいち早く購入。私もなけなしのお金をはたいて、50万円の大きなIBM製ラックトップパソコンを買ってみましたが、すぐに動かなくなりました。

それからだいぶ後の話ですが、1997年に支店の自動車電話がアナログ回線からデジタル回線に切り替わりました。そのとき、アナログの時は太い声だったものが、デジタルでは細く聞こえたのが印象的でした。電話機の問題か、私の気のせいかもしれませんが、音が劣化したと感じたのです。おそらく、デジタルについて聞いた説明が頭のどこかに残っていたのでしょう。


 

デジタル・トランスフォーメーション

最近、デジタル・トランスフォーメーションという言葉をよく聞きますが、なんだか底が浅いように感じます。というのは、デジタル化しないと、生き残れないというほど追い込まれていませんし、今のシステムで何が悪いのかと、どこかで思っている人が多いのだと思います。

仮に、300人でやっていた仕事をたった1人でやれるなら、改革と言えますが、300人を100人にするくらいでは改善の域は出ません。本当にデジタル・トランスフォーメーションを行うなら、余った299人をどうするのか。解雇するのか、配置換えなのか。その問題を片付けない限り、先には進めません。

デジタルの世界に乗らない部分をどうするかという問題もあります。たとえば、人間の感情はどうなのかは、気になる所です。最近は、感情の動きをどうデジタル化して計測するかという学問がずいぶん進み、人の感情認識もかなりデジタルで処理できるようになっているようです。

知人から聞いた話ですが、地方の売れない大きな書店の売上改善というテーマを請け負った方が、店内にデジタル機器を持ち込んで、来店客の感情や行動の解析をしたそうです。どこのコーナーの前で人が本を手に取り、いい表情になって、購入に至るのか。たくさんのカメラで撮った画像を、画像認識にかけて分析し、その結果を売り場改善に役立てたのです。すると、売上が30%近く向上したそうです。とはいえ、機械の導入だけで3000万円も4000万円ものコストがかかったらしいですが。

デジタル処理で成果を出せるのは、あくまでも目的が明確に定まり、どんなデータを取ってどう活用するかというプロセスがはっきりしているからです。ただ漫然とカメラで画像をとっても分析はできません。そこが、デジタル・トランスフォーメーションの陥穽だと思います。